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2023年12月8日
峠が好きだ。「今がヤマ場」など比喩に使われる言葉でもあるが、地理的な峠にワクワクする。「峠」は山稜線の側面の片方から 反対側に乗り越えるように道がつけられている場合、その稜線の低くなっている場所を指す。登山の用語では「コル」(鞍部)になるが、この場合は稜線沿いの山と山の間であり、それが交差するのであればコルであり峠となる。有名や峠にヤビツ峠や夜叉神峠、渋峠などがあるが、登山愛好家だけでなくサイクリストもワクワクする地名だと思う。峠は難路になることが多いが、最近では山を掘り抜いてトンネルを開通させ、人気(ひとけ)がなくなった峠も多い。北アルプスの安房峠や奥秩父の雁坂峠なんかを思いだす。自分もたまにサイクリングなんかするけど、長い登りを克服して峠を越すと壮大な下りが待っていて「これだからやめれない」なんて思ったりする。自転車だけではない。車で峠を越すことも楽しい。峠は県境になっていることも多く、気候も一変するなんてことも多い。ゲレンデ目指して月夜野から三国峠を越えたり、横川から碓氷峠を超えたりすると、一気に白い風景が表れ感動したものだ。
信州側から奥飛騨に向かう時、安房トンネルが出来る前は安房峠を超えるしかなく、冬季は通行止めになるので信州と飛騨の交通は分断されていた。夏でも平湯から上高地に向かうバスに乗っていると、その高度感と狭い車幅で対向車とすれ違う時にスリリングな気持ちを味わったが、今はトンネルで数分で通過できてしまう。「峠を越える」ことも少なくなり、便利でもあるが旅情も希薄になっている気がする。
「峠」。司馬遼太郎ファンなら河井継之助の一生を描いた「峠」を思い出すだろう。自分の尊敬する人物でもあるが、最近では「最後のサムライ」として役所広司が演じて話題になった。この物語の冒頭と終盤に二つの峠が舞台になるのが対比として印象的だが、戊辰戦争がサムライ時代の「峠」であったのだろうとも思う。司馬遼太郎の大半の歴史小説を読んだが、その中でも「峠」が一番好きだ。読みやすいし「燃えよ剣」と並んで好きな本に挙げる人も多いと思う。二作とも同じ時代を描いたものだし、幕末を知るならこの2作を読んで損はないと思う。
沖縄には国土地理院が定める「峠」はないが、峠道はある。源河から有銘を結ぶ県道14号線や恩納村と屋嘉を結ぶ県道88号線など、最高点が確実にあり、峠と呼べるポイントがあるけど、如何せん短くてワクワク感がないのが小さな不満である。