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2023年12月18日
弊社で開店した工芸品店舗のお客様の様子を見ていると、商品の扱いに対して2通りのタイプがいることに気付いた。1つ目は手を後ろに組んで、じっくり目で見て吟味する人。正直お店にとってはありがたい客だ。もう1つのタイプは片っ端から触っていく人。もちろん陶器など購入を検討するなら質感や持ち重りなど持って吟味するのが普通だ。こういうお客様もありがたい。しかし「意味なく」片っ端から商品に触れていく人には、正直なんとかならないものかと思う。弊店では店頭の商品をオンラインショップでも販売しており、商品をいつでも綺麗な状態に保っておきたい。店頭販売でも購入するお客様に気持ちよく使って頂きたい。ところが、店頭の商品を通り過ぎながら片っ端から触っていく人も一定数いる。正直「お前はネコか」と思ってしまう人もいるのだ。目の前にあるものを何気なく撫でながら店舗内を歩く人。財布を開けて閉める人。鍋の蓋を開けて閉める人。意味もなく商品を押して弾力を調べる人。おそらく「生鮮売り場の刺身」でも同じことをしているのであろう。そしてそういう客ほど元の場所に戻さず、微妙に元の置き位置を変えて戻すのだ。
昔勤めていた免税店では繁忙期にサングラスコーナーのヘルプをすることが多かった。膨大なサングラスを自由に試着出来る店であったが、1本数万円のサングラスが殆どだ。しかし、ここぞとばかりに試着しまくって仲間と笑い合ったり写真を撮ったり目に余る人も少なくなかった。それでも購入されるお客様もたまにいた。しかし、そういう人ほど購入時に「在庫から出してね」というのだ。そういう人には在庫があっても「これが最後の1点ですね」と答えた。店頭の商品は試供品ではない。サングラスなど試着する際は両手で扱うのが当たり前なのに、片手で雑に扱って、購入する際は「新しいのを出せ」とはふざけている、と内心呆れていた。試着しまくって自分はそれを買わなくても、他の人がそれを買うかもしれないのだ。想像力の欠如というか、利己主義というか、そういう人を目の当たりにすると暗い気分になった。
ここで思い出すのは「国分寺書店のオババ」だ。学生時代によく読んだ椎名誠のデビュー作で、今でも名作「哀愁の街に霧が降るのだ」と同じくらい好きな本だ。この本はエッセイで、筆者が常日頃感じている社会への疑問や不満をオモシロ真面目に書き連ねているのだが、そこで「国分寺書店のオババ」が登場する。古本屋の国分寺書店のオババは客に厳しく、本の扱いが雑だったり、立ち読みしたりすると、容赦なく厳しく叱るので多くの客には疎まれていた。しかし筆者が売る本を丁寧に陳列していたり、購入する本がいつも綺麗だったということを後で思い出し、時代の波で消えていった「国分寺書店とオババ」の本意を知り悲しみ嘆くというあらすじだ。今になって共感するのは「買って頂くお客様に商品を最高の状態で維持する」ということだ。工芸品も本も触れば触るほど手垢がつく。多くの人に見て触って貰わなくても「一部のお客さま」に対してでもいい状態のものを売る、という姿勢に自分は大きく共感する。
自分も「さらば」にならないよう、厳しい「工芸の杜のオジジ」を続けていきたい。
補足)手しごとで作られている作品・商品は、どれ一つ同じものはありません。作家さんが愛情込めて作った一点物の商品を丁寧に扱っていただきたい、そして購入されるお客様にもいい状態で提供したいという想いです。
もちろん、購入を検討するために実際の商品に触れてご確認いただくのは弊店でも大切だと考えております。ケースに入っている商品などを確認したいお客さまは遠慮なくスタッフにお声がけください。