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2024年5月22日
また昔の話になるが、仲のいい先輩とわざわざ苗場のJ-Trip Barまで踊りに行き、苗場プリンスなどに泊るお金もないので「さあどうしよう、昨日も車中泊だし」なんてことが数回あった。幸いその先輩の実家が十日町なので苗場からはさほど遠くない。「何にもないけどウチの実家にいこうや」ということで、十日町の先輩の実家に明け方にお邪魔したことがあった。迷惑極まりないのだが、とんでもない時間に突然帰って来た息子とその友人に優しい母親は「寝る前に朝食でも食べなさい」とコタツに朝食を準備してくれた。同じこたつでは父親が不機嫌そうに新聞を読んでいる。恐縮しながら朝食を待っていると、テーブルのど真ん中に「どどーん」と鎮座している野沢菜漬が目に飛び込んできた。正直それまで野沢菜漬を好んで食べたことがなかったが、事前に「野沢菜漬くらいしかないからさあ」と聞いていたその鎮座まします野沢菜漬は本当に旨そうだった。そこに「米は旨いよ」とこれも事前に聞いていたが、「本場のコシヒカリ」をお櫃で母親が持ってきたときは「旅館かよっ」と驚いたが、茶碗によそって頂いたご飯を食べて唸った。「ウ、ウメイ」。恥ずかしながらそれしか言葉が出なかった。おかずは謙遜ではなく、本当に野沢菜漬しかなかったが、それがトンデモなく旨く、白米もトンデモなく旨く、確か7杯くらい食べて不機嫌だった父親も驚かせてしまった。それから父親が仕事に出ようとしている中、息子たちは布団にもぐり込み昼過ぎまで寝てから東京に帰るのだった。
一方、その先輩と横浜で深酒した時は、当時保土ヶ谷にあった我が実家に泊めたこともあった。その時はまだ深夜で朝食の時間ではなかったので自分の部屋で寝てしまったが、見慣れない靴が玄関にあるので友人が泊っていることを知った我が母親が、しっかり朝食の準備をしてくれていた。あまり友人を泊めることがない上に、朝からご飯を食べる風習がない我が家だったが、以前その友人の実家で朝食を頂いたことは話してあったので、それなりに母は気合を入れて朝食を準備したようだ。明太子に、焼鮭、卵焼きに海苔や納豆などを見て、先輩も「旅館かよッ」と呟いていた。
時が経ちその先輩と飲んだ時に必ずネタになるのが、「あの時の朝飯が今まで食べた朝飯で一番だなあ」とそれぞれ相手の実家で食べた朝食を持ち上げるのだった。二人の母親はそんなドラ息子達の話を天国で聞いてどう思っているのだろうか。