上海の国際ハブ空港である上海浦東国際空港の混乱が継続しておりかなり深刻な状況だ。
上海市では先週末に新たな新型コロナウイルスの感染者が5人確認され、5人全員が上海浦東国際空港で働く労働者だったために、空港でのクラスターと認識された。しかも5人全員が新型コロナワクチンを2回接種済み。5人ともワクチン接種後に感染するブレークスルー感染だったことになる。
中国では7月下旬以降の国内感染が収束に向かっていたが、また上海から感染が再度拡大する恐れもあり、当局も神経を尖らせている。
先週末は航空貨物の取り扱い機能が全面的に停止しており、今週に入って貨物を取り扱う上屋業務の一部が再開されたようだが、貨物便の運休や受託停止・制限が拡大。航空貨物のキャパシティーが大きく圧迫されている。
問題が長期化すれば、サプライチェーンへの大きな影響は避けられない。
実際インドの家電メーカー、スマートフォンやパソコンの生産を手掛ける企業各社は、部品の主要調達先である中国がこのような状況のため、生産体制を1~3割削減せざるを得ない状況になっている。
浙江省の寧波舟山港もコンテナターミナルの一部が依然閉鎖されており、貨物の取扱量が減少している中国の空港や港湾は少なくとも15カ所に上る。
上海市は市内の防疫規制を一段と強める方針だ。同市交通委員会は21日、市内の地下鉄に対して以前よりも厳格に感染防止策を実施するよう要請したと明らかにした。
同市の地下鉄の一部が浦東空港に乗り入れていることを踏まえ、空港の感染が市内各地に拡大することを防ぐ狙いという。
上海の地下鉄は現在、全ての駅が利用者の体温を測る設備を取り付けている。
今後、同設備を用いて発熱者の地下鉄利用をこれまで以上に固く禁じる考え。
さらに、マスク着用の呼び掛けや駅構内の設備の消毒も徹底する方針で、手すりやエレベーターなど乗客が頻繁に触れる部分は1日最低4度消毒するとした。
大規模な新型コロナの検査にも乗り出した。同市は21日昼までに約7万5,000人に対してPCR検査を実施した。同市衛生健康委員会によると、一部の医療機関は一時的に一般診療を取りやめて新型コロナの検査業務に専念する方針。迅速かつ大規模な検査の実施で、新型コロナの市内拡大を抑える狙いだ。
一方で浦東空港の旅客便運航には制限を加えない方針を示した。同空港は感染リスク低減を目的に旅客便と貨物便の業務を厳格に分離しており、現時点で同空港の旅客便が感染経路になるリスクはないとの見方だ。
この上海市の対応、決して大げさとは思えない。むしろ日本政府もこれくらいの危機意識を持って臨んで欲しいものだ。
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