今回はSDGs、ではなくSDSと航空貨物の関係についてお話します。
SDSは正式には化学物質排出把握管理促進法(以下、化管法)SDS(Safety Data Sheet)制度といいます。事業者による化学物質の適切な管理の改善を促進するため、化管法で指定された「化学物質又はそれを含有する製品」(以下、化学品)を他の事業者に譲渡又は提供する際、該当する化学品を譲渡又は提供するときまでに、化管法SDS(安全データシート)により、化学品の特性及び取扱いに関する情報提供を義務づけるとともに、ラベルによる表示を推進する制度です。
取引先の事業者から化管法SDSの提供を受けることにより、事業者は自らが使用する化学品について必要な情報を入手し、化学品の適切な管理に役立てることを目的としています。国内では平成23年度まではMSDS(Material Safety Data Sheet)と呼ばれていましたが、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム/The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)で定義されている「SDS」に統一されました。
化学品を取扱う事業者には、本来、規制の有無に関わらず、人の健康や環境への悪影響をもたらさないよう化学品を適切に管理する社会的責任があります。特に、化学品の適正管理を行うためには、有害性や適切な取扱方法などに関する情報が必須です。しかし、化学品の製造・譲渡・提供を行う事業者は、その有害性等の情報を入手しやすい立場にある一方で、これらの情報は取引相手に積極的に開示されるものではないことから、“事業者から事業者へ”の有害性等の情報の確実な伝達の必要性が認識されるようになりました。
そのため日本では、平成11年7月に公布された化管法のもと、化学品の性状や取扱いに関する情報の提供を規定する化管法SDS制度が法制化され、平成13年1月から運用されています。
貿易の世界でもSDSは貨物の輸出に必要不可欠な書類となっています。いわゆる「危険品」に該当するものは、原則として航空機に搭載することが出来ません。飛行機に搭乗する際に保安検査で持ち込めないと言われるものは大抵その対象となります。
しかし危険品該当品目でも、SDSによって安全性(発火点、反応性、安定性や物理的状態など)が確認されれば搭載できる場合もあります。危険品に該当するか否かは航空会社によって異なります。その判断のためにはSDSは必要です。
危険品にはUN ID国連番号(United Nation Number)が付されており、さらにその危険度が下記の1~9までのクラスに分かれています。
1. 火薬類(Explosives)
2. 高圧ガス(Gases)
3. 引火性液体類(Flammable liquids)
4. 可燃性物質類(Flammable solids; substance liable to spontaneous combustion; substances which, on contact with water, emit flammable gases)
5. 酸化性物質類 (Oxidizing substances and organic peroxides)
6. 毒物類 (Toxic & infectious substances)
7. 放射性物質類 (Radioactive material)
8. 腐食性物質 (Corrosives substances)
9. その他の有害性物質 (Miscellaneous dangerous goods substances and articles, including environmental hazardous substances)
これらに該当するか該当しないかはSDSに記載されています。弊社で取り扱いの多い化粧品はUN ID8000に該当し、日用品(CONSUMER COMMODITY)として区分されます。化粧品を航空機で輸送する場合、UN8000が従うべき規制内容については下記の通りとなります。
国連番号8000|UN NO.|日用品【航空輸送】
国連番号 UN8000
日本語名称 日用品
英語名称 CONSUMER COMMODITY
分類、区分番号 9
隔離区分 -
副次危険性 -
ラベル S
等級 -
微量輸送許容量 -
少量輸送許容物件 容器・包装:-
許容質量・容積:-
旅客機 容器・包装:Y963
許容質量・容積:30kg(包装物込みの質量)
旅客機以外の航空機 容器・包装:Y963
許容質量・容積:30kg(包装物込みの質量)
特別規定 A112
ラベル「S」はその他の有害性物質に分類される危険品のためのラベルです。
「Y963」とは次の要件を満たす必要があります。
(1)内装容器は、日用品の業務用若しくは家庭消費用の販売の為に製造された容器( エアゾール製品用を含む。)とする。
(2)内装容器は、適切な外装容器に収納し、必要に応じ緩衝吸収材等を詰めること。
(3)容器及び包装は、輸送中の高度及び温度変化により漏えいが生じないよう設計され、かつ、告示第7条、第8条、第9条及び第11条で規定する容器及び包装等に従うこと。
化粧品に関して言えば、全ての化粧品がUN8000に該当するわけではありません。むしろ該当する方が少ないと言えます。前述の通り、UN8000に該当してもSDSで安全性が証明されれば「危険品」(DG Cargo)として搭載が可能になる場合も多いです。また、ある航空会社では断られても、別の航空会社では取り扱って貰えることもままあります。しかしDG扱いは運賃が通常貨物より高くなるだけでなく、取扱い手数料も上がる一方、フリータイムは短くなります。
輸出しようとする貨物が危険品に該当するかどうかは、統一的なガイドラインとして国際連合が発する「危険物輸送に関する勧告」(オレンジブック)で調べることが出来ますが、中々読解するのは難しいです。
また国際輸送の際はオレンジブックに定められた国際規定だけを順守すればいいわけではありません。空港の上屋に搬入するまでには国内輸送も必然的に必要となります。日本の毒劇物取扱法、消防法、高圧ガス保安法などにも注意しなければなりません。
このように危険品の輸出には手間と時間が掛かります。該当しそうな物があれば、早めに書類の準備に取り掛かり、余裕をもって通関会社やフォワーダーに相談することが重要です。
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