海外からの貨物を輸入する際に必要な手続きを輸入申告といい、業界ではIC (Import for Consumption)や直接輸入と言われています。IC は外国貨物を一般的な方法で輸入通関することを指し、外国貨物に対して関税と輸入消費税 を納付し、内国貨物とする手続です。しかしそれが全てではありません。他にも蔵入承認=IS(Import for Storage)や、移入承認=IM (Import for manufacturing)(移入)があります。今回は蔵入承認=IS(Import for Storage)について説明します。
蔵入承認=IS (Import for Storage)は、外国貨物の状態で保税蔵置場に3か月を超える期間、蔵置(保管)する場合に税関に対して行う手続きです。一般的なICは、貨物が日本に到着したら輸入申告を行い税金を納付して流通するのですが、なぜ海外からの貨物を輸入せずに3か月以上も蔵置する必要があるのでしょうか。普通は輸入したらすぐに使ったり販売したりしたいですよね。しかしそうしない(できない)のは、下記の通り様々な理由があるのです。
①すぐに必要ないので輸入税の支払いを先延ばしにしたい。
②今は資金的な理由で輸入税を支払えない。
③免税販売するために外国貨物のままでいい。
④必要ないので輸入せずに外国に積み戻す。
①は海上運賃と関係しています。海上運賃を抑えるために、ある程度まとめた量の商品を20fや40fのコンテナで一度に輸送した方が、必要都度LCLや空輸するより効率的です。当然商品を一定期間保管するための保管料が発生しますが、外国貨物の保管料には消費税が掛からないため、保管料が同額なら少なくとも1割は内国貨物を保管するより安くなる理屈です。また自社で保税蔵置場を持っているならば、保管料を気にする必要もありません。さらに外国貨物のまま保税蔵置場に保管し、必要輸入手続きを行い、その分の税金を納めることでキャッシュフローも良くなります。このように、IC後に内国貨物として保管するより、ISの状態で保管した方が有利なことも少なくありません。
なお、ISしたものを内国貨物にする手続きをISW (Import from Storage Warehouse)、蔵出輸入といいます。
②は切実な理由ですが、日本まで輸送はしたものの、資金的な理由で輸入税を払えないこともあります。またはもっと戦略的な理由もあります。コンテナ運賃の値上がりや為替の変動を見越して、より有利な条件な時に運送をしておき、需要はもっと先のためにICも先延ばしという場合です。ネガティブな理由では、販路が決まっていない、契約が遅れている、契約が不履行になったなどの場合もあります。
③は免税店が販路の場合です。免税店は外国貨物を販売して、販売後に購入者が出国したり、入域(沖縄型免税店の場合)する際にISWを行うので、ICする必要がありません。
④は契約と違う商品が届いた場合や条件が異なるなどの理由で輸出者に返品を行う場合に起こり得ます。一旦ICやISWを行ってから、輸出者に返品を行う場合、支払った輸入税は戻って来ません。(還付が認められる場合もありますが、レアなケースです) 従って違約による返品などが可能な条件の場合、ICする前に商品の状態を確認しておく必要があります。
このように状況によってISを行うメリットがあります。もっとも3か月未満にICや積戻しする予定であれば、ISの必要はありません。保管料に気を付けていれば、外国貨物のまま3か月未満は蔵置しておくことが可能です。3か月以上超える場合は、必ず3か月を超える前にIS承認を受けなければなりません。1度IS承認を受ければ2年間は外国貨物のまま蔵置することが可能です。2年を超える場合は蔵置延長の申請を行います。
このようにISと保税制度を理解して、上手く保税蔵場を在庫調整機能として利用していくことが輸入者には求められます。
関税法
(外国貨物を置くことができる期間)
第四十三条の二 保税蔵置場に外国貨物を置くことができる期間は、当該貨物を最初に保税蔵置場に置くことが承認された日から二年とする。
2 税関長は、特別の事由があると認めるときは、申請により、必要な期間を指定して前項の期間を延長することができる。
(外国貨物を置くことの承認)
第四十三条の三 保税蔵置場に外国貨物を入れる者は、当該貨物をその入れた日から三月(やむを得ない理由により必要があると認めるときは、申請により、税関長が指定する期間)を超えて当該保税蔵置場に置こうとする場合には、政令で定めるところにより、その超えることとなる日前に税関長に申請し、その承認を受けなければならない。
2 前項の承認は、保税蔵置場に同項の期間を超えて外国貨物を置くことが他の法令の規定によりできない場合及び保税蔵置場の利用を妨げる場合を除くほか、しなければならない。
3 第六十七条の二(輸出申告又は輸入申告の手続)、第六十七条の三第一項前段(輸出申告の特例)及び第六十七条の十九(輸入申告の特例)の規定は、第一項の承認の申請をする場合について準用する。
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