円の下落が止まらない昨今、決済通貨について頭を悩ませている貿易関係者は多いと思います。160円/ドルが当面のピークだとすると、為替予約のタイミングも難しいのではないでしょうか。ところで貿易決済の通貨は一般にはどの通貨が多いのでしょうか。
財務省が今年の1月に発表した通貨別比率は次のようになっています。
(令和6年1月30日財務省報道発表)
日本からの輸出(全世界対象)
米国ドル 51.0% 円33.8% ユーロ7.2% 元2.1% 豪ドル1.5% その他4.4%
日本への輸入(全世界対象)
米国ドル 69.5% 円23.4% ユーロ3.4% 元1.7% タイバーツ0.6% その他1.4%
日本の最大貿易相手国はもちろん中国で、輸出入平均で20%弱(令和5年度)と大きな割合を占めているにも関わらず、決済通貨の比率は輸出入どちらも2%前後と非常に小さいものです。逆に対米国は輸出入平均で15%以下にも関わらず、輸出入の決済通貨は55%を上回ります。通貨の安定度や信用性によるものですが、要は決済通貨は自国通貨や相手国の通貨である必要はないのです。
(財務省貿易統計:貿易相手国上位10カ国の推移)
特に最近のような円安相場が続く場合、輸出相手国がどこであれ、日本円での決済が双方にとって有利な傾向にあります。何故かというと、円決済の場合、輸出国の日本は自国通貨ですから為替の影響を受けにくいからです。相手国はどうでしょう。例えば相手国が米国で輸入国である場合、1ドル120円と160円の場合を比較すると、
決済価格が2,000,000円の場合、120円/ドルの際は16,666.67ドル必要になります。160円/ドルの場合は12,500.00ドルで済みますから米国側から見ればお買い得以外の何物でもありません。円安は輸出企業にとって有利と言われる理由はここにあります。相手がバンバン買ってくれるわけです。逆に輸入業者にとってはどうでしょう。米国から50,000ドル相当の商品を輸入する場合、決済通貨がドルであれば120円/ドルの際は6,000,000円必要になります。 160円/ドルの場合は8,000,000円必要になり、その差は
2,000,000円です。輸入に頼っているガソリンや食品などはもろに円安の影響を受けるわけです。もっとも輸出企業も儲かって仕方ないわけではありません。原材料を輸入に頼る車や機械などは製造コストが跳ね上がりますから、喜んでばかりはいられないのです。
貿易は相手があることですから常にこちらの要求が通るわけではありません。ゴリ押しするのも手ですが、双方にメリットがある妥協点を見出して交渉の舞台につくことが大切です。その為には為替の変動が相手国にどのような影響を及ぼしているのか把握しておく必要があります。そうすれば何か打開策が見つかるはずです。ここが貿易の醍醐味とも言えます。
Comments